ハチャトゥリアン楽団のJazzコラム

2011年10月5日更新

第5回「Meet Me On Frenchmen Street」

こんにちは。ハロです。
第五回は「Meet Me On Frenchmen Street」と題し、近年注目されている音楽ストリート、フレンチメン・ストリートをご紹介します。

まずは、フレンチクオーターの地図を見ながら説明いたしましょう。
(フレンチクオーターの場所については、第三回をご参照ください。これは、2011年春にフレンチクオーター内で入手した地図に、書き足しました。)

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ネオンの明かりと音楽が絶えず、日夜観光客であふれる王道の音楽ストリートといえばバーボン・ストリートですが、より地域に密着した音楽ストリートとして、近年注目されているのがフレンチメン・ストリートなのです。地図の右手に黒く記したところ、碁盤の目のような街並みのフレンチクオーターを少し外れたところにあります。

ネオンではなく、木製の看板を掲げた十数件のライブハウスが軒を連ねるこの地域では、ニューオリンズや近辺の地元出身のミュージシャンたちによる、幅広いジャンルの音楽に出会うことができます。

そんなフレンチメン・ストリートの雰囲気を味わえる、1枚のアルバムをご紹介しましょう。

「Meet Me On Frenchmen Street」Shamarr Allen

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「Meet Me On Frenchmen Street」Shamarr Allen
Release & Recording Date: 2007

TRACK LIST AND REALAUDIO

1.Meet Me On Frenchmen Street
2.St. James Infirmary
3.When You’re Smiling
4.Yes Suh!
5.Blues For Chester
6.Milenburg Joy
7.It’s Only A Paper Moon
8.Do You Know What It Means To Miss New Orleans
9.Saints Medley

ニューオリンズ生まれ、ニューオリンズ育ちの若手トランペッター、シャマー・アレンのソロアルバムです。ジャズのスタンダードナンバーから、ニューオリンズブラスバンドまで、幅広く楽しめる1枚です。
音楽もすごいが、参加ミュージシャンがすごい。
クラリネットには教授としても名高いニューオリンズジャズの後継者マイケル・ホワイト。
現在HBOが制作しているドラマ「Treme(ハリケーン・カトリーナから3ヵ月後のニューオリンズ、トレメ地区を舞台にしたTVドラマ)」にも出演している売れっ子トランペッター、カーミット・ラフィンズも歌で参加しています。
PERSONNE

Shamarr Allen – trumpet, vocals
Stephen Walker – trombone
Dr. Michael White – clarinet
Calvin Johnson – saxophone
Byron Bernard – saxophone
Irvin Mayfield – trumpet
Herbert Stevens – percussions
Thaddeus Richard – piano
David Pulphus – bass
Bob French – drums
Herlin Riley – drums
Kermit Ruffins – vocals
Paul Sanchez – vocals
Ellen Smith – vocals
Hot 8 Brass Band
Original Royal Players Brass Band

まずこの特徴的なドラムのリズムは、ニューオリンズを代表するドラマー、ハーリン・ライリーが叩いています。「ドン、ドン、ドンストドンドン」という、2小節を区切りに詰まるようなベースドラムのラインは、ビッグ・フォー(Big Four Beat)と呼ばれ、初代ジャズ王バディー・ボールデンが発明したリズムと言われています。
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「Meet Me On Frenchmen Street」のコード進行は、ニューオリンズ・リバイバルを代表するドラム奏者、ポール・バーバリン(1899年5月5日-1979年2月17日)が1949年に作詞作曲をし、今ではニューオリンズジャズ、ディキシーランドジャズのスタンダードナンバーとなっている「Bourbon Street Parade」と同じです。ニューオリンズの曲はたいへんシンプルなものが多いため、一つの曲の中で、コード進行の似ている違う曲のメロディーを演奏するという音楽的遊びが、昔からよく用いられています。
 アルバム最後の曲、「Saints Medley」も、おなじみ「聖者の行進」のテーマから、次々とブラスバンドの違う曲が登場します。このアルバムで演奏されている曲の他にも、日本でもなじみ深いアメリカ愛唱歌「赤い川の谷間(Red River Valley)」や「上を向いて歩こう」のメロディーを、「聖者の行進」の中で演奏することもあります。ジャズの遊び心の一つです。

このアルバム「Meet Me On Frenchmen Street」の収録曲のように、スタンダードジャズナンバー、演奏家によるオリジナルナンバー、ブラスバンドスタイルの演奏や、ファンクバンド、ロックバンドなどと幅広いジャンルが楽しめるのが、このフレンチメン・ストリートの特徴。ミュージック・チャージ無料のお店も多く、お酒も安いため、お店を「はしご」することも可能です。
 今年2011年の春には、フレンチメン・ストリートで活躍するミュージシャンを集めた、コンピレーションアルバムも発売されています。こちらの1曲目もMeet Me On Frenchmen Streetですね。

Frenchmen Street (Sounds of New Orleans Series)

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1.Meet Me on Frenchmen Street – Shamarr Allen

2.You’ve Got To Be Crazy to Live in This Town – Alex McMurray

3.When The Hoodoo Come Down – Jesse Moore

4.Dumaine Street Blues – Glen David Andrews

5.Alright Alright – New Orleans Nightcrawlers

6.Mardi Gras Carnival – Margie Perez & the King Cake Babies

7.Exit To Mystery Street – Paul Sanchez

8.Shake Your Rugalator – Craig Klein

9.Down at the Jazzfest – Holley Bendtsen & Amasa Miller

10.Stew Called New Orleans – John Boutté & Paul Sanchez

11.Sougouya – Matt Perrine & Sunflower City

12.Louisiana 1927 – John Boutté*

(LIVE FROM THE 2006 Jazz & Heritrage Festival)
このように、現在のニューオリンズにはジャズのみならず、たくさんのジャンルの音楽が溢れています。
 今回ご紹介したCDや、他のジャンルのCD、レコードも手に入る、ニューオリンズでもっとも有名なレコード屋さんをご紹介いたします。最初の地図で黄色い◎で記した場所にある、「Louisiana Music Factory」です。店内は地元ミュージシャンの写真で飾られ、時々インストアライブも行われています。
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ドラムをあしらった特徴的な看板。レジ前で、タトゥーシールももらえます(無料)。
なかなかニューオリンズへ行けない方のために、オンラインショップもあります。
こちら「Louisiana Music Factory(英語のみ)」http://www.louisianamusicfactory.com/
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Louisiana Music Factory店内には、地元ミュージシャンの写真もたくさん!

今回は、町の紹介から音楽に踏み込んでみました。そもそも、「Jazz活」というコラムタイトルは、私が考えたらしいのですが…、
Jazz活というよりも、ニューオリンズ活動、NOLA活(New Orleans, Louisiana=NOLA)と言ったほうがいいのかしら。しかし、ニューオリンズは確かにJazzの都です。 See you later, Alligator! By ハロ