ハチャトゥリアン楽団のJazzコラム

2011年11月5日更新

第6回「ニューオリンズ・セインツ」

どーも、まるやまです!
前回の予告通り、今回僕はニューオリンズを本拠地とするNFL(アメリカンフットボール)チーム New Orleans Saints(ニューオリンズ・セインツ)をご紹介いたします!
JAZZ発祥の地ニューオリンズという街を様々な視点からみることにより、JAZZの理解も深めていこう!
というなかなか新しい姿勢で挑むハチャトゥリアンのJAZZ活であります。

NFLの簡単な説明

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今回もリーグの説明から始めましょう!
例によって、面倒でしたら説明は読まず、
この下の「ニューオリンズ・セインツ!!」へGO!

NFLとは、National Football League(全米フットボール連盟)の略で、 1920年にAPFA、American Professional Football Associationとして発足し、その2年後の1922年にNFLに改名して、正式に発足しました。

現在では、他の4大スポーツ(MLB,NBA,NHL)を抜き、最もアメリカで人気のあるスポーツになっており、
毎年2月の第1日曜日に開催される、NFLの優勝決定戦である、
「スーパーボウル」
は、毎年全米平均視聴率40%を超えており、近年では50%に迫る勢いです。さながら、アメリカの「紅白歌合戦」といった感じですね

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NFLには現在全部で32個チームがあり(NBAと違い、全てアメリカの州にあります)、 NBAと同じく、ふたつのリーグに分かれています。
このリーグのことを、NBAと同じく、カンファレンスと呼びます。
AFC(アメリカン・フットボール・カンファレンス)と、
NFC(ナショナル・フットボール・カンファレンス)に分かれており、
各カンファレンス16チームずつ所属しています。

現在のNFLは、
1922年に発足した旧NFLと、
1960年に発足したAFL(American Football League)が、
合併したもので、

AFCがAFLの名残で、
NFCが旧NFLの名残、
なのですが、
単なるグループ分けだと思っていただければ大丈夫です。(銀行の合併みたいなものです)
そしてそのカンファレンスを更に、
東西南北の地区(ディビジョン)に分けてあり、各地区に4チームずつ所属しています。
つまり32÷2÷4ってことですね!(余計わかりづらいか)

NFLのシーズンの流れ

さぁ、かなり複雑な説明を終えたところで、NFLの1年の流れを簡単に説明しましょう。
NFLの試合は、テレビ放送とも密接に関係があり、なかなか面白いシステムだと個人的には思います。

1. レギュラーシーズンを各チーム82試合戦う。

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写真はイメージ
(現役当時のNFLのスーパースター、ジョー・モンタナのもの)

「少なっ!」と思った方も多いでしょう。
そうです、少ないんです。

NFLの試合は基本的に週に1回です。なので、1試合1試合が非常に重要であり、そのスリルもNFLの魅力のひとつです。
基本的には毎週日曜日に15試合が行われ、その内の1試合が夜のゴールデンタイム(アメリカではプライムタイムと呼びます)に全国ネットでライブ放映されます。その試合を「サンデーナイト・フットボール」と呼び、選手はより気合が入ります。(それ以外の試合は基本的に昼に行われます)

そして基本的に、残りのもう1試合を月曜日に開催します。その試合もプライムタイムに放送され、その試合を「マンデーナイト・フットボール」と呼び、全国でも1試合しか放送されないため、選手はめちゃめちゃ気合が入ります。

開幕週はマンデーナイト・フットボールが2試合あったり、の例外はありますが、基本的には上記のプランでレギュラーシーズンが進行します。

前年度の強かったチームがそういった「サンデーナイト・フットボール」や「マンデーナイト・フットボール」を戦うことが多いようですね。

2.レギュラーシーズンの成績で、各カンファレンスの地区1位になった4チームと、各カンファレンスの1位以外で勝率が高かった2チーム(ワイルドカードといいます)、計16チームがプレーオフを戦う。

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▲前回のNFLプレーオフ2011の出場チーム
ちょっとわかりづらい!自分で書いてても、わかりづらい!

ので、上の図で説明すると、
NFC東1位のイーグルス(10勝6敗)、南1位のファルコンズ(13勝3敗)、西1位のシーホークス(7勝9敗)、北1位のベアーズ(11勝5敗)がプレーオフに進出します。

それに加え、上記4チーム以外のAFCに所属しているチームの中で最も勝率の高かった2チーム、北2位のパッカーズ(10勝6敗)と南2位のセインツ(11勝5敗)がワイルドカードとしてプレーオフに進出します。
AFCでも同様。

ちなみに、NFC西1位のシーホークスよりNFC南3位のバッカニアーズ(10勝6敗)の方が勝率が高いけれども、シーホークスは地区の1位なので出場でき、バッカニアーズは地区で3位な上、カンファレンスでの勝率も上位2 チームになれなかったので、プレーオフには出場できませんでした。その年の、同地区のチームの調子もかなり重要なわけです。(勝率が同じのチームが複数ある場合、得点率などを比較して、順位を決めます)

そして重要なポイントがもう1つ!NFLのプレーオフはトーナメント制ですが、NBAのような3勝先取などではなく、負けたら即終了のサドンデス方式なのです。

つまり、プレーオフが始まってから1度も負けなかったチームのみが、優勝できるというわけで、このスリルも人気の要因の1つではないかと、僕は思ってます。

3.プレーオフを勝ち抜いた、AFC、NFC各1チームずつが、毎年2月の第1日曜日に開催される優勝決定戦、「スーパーボウル」を戦う!

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写真は2011年のSuper Bowl XLVで優勝したGreen Bay Packersのもの。(ちなみにXLVは第45回という意味)

ここで優勝するために、毎年選手や監督やチームスタッフは頑張るわけであり、選手はファンの喜び方は尋常じゃない。アメリカ人が1年で最も盛り上がる日だと言っても過言ではない。

ニューオリンズ・セインツ!!

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創設:1967年

 本拠地:アメリカ合衆国ルイジアナ州ニューオーリンズ

スタジアム:ルイジアナ・スーパードーム
チームカラー:黒、オールド・ゴールド、白

ヘッドコーチ:ショーン・ペイトン

オーナー:トム・ベンソン

スーパーボウル2009 XLIV 優勝

NLFの、
NFC National Football Conferenceの、
南地区 South Divisionに、
ニューオリンズ・セインツ New Orleans Saintsは所属しています(マトリョーシカみたいね)。

セインツが誕生したのは、1966年の11月1日。この日はハロウィンの次の日、いわゆるカトリック教における「万聖節」の日。
この日は全聖人に祈りをささげる日で、英語では「All Saints Day」と呼ぶんですね。
このことと、ニューオリンズ・ジャズを代表する曲、「When the Saints Go Marching In」 (聖者の行進)にちなんで、
ファンの公募によって、
「ニューオリンズ・セインツ」
という名前になりました。
もちろん、チームのテーマソングは「When the Saints Go Marching In」です。
そしてセインツはとにかく弱かった!
アメリカンスポーツに於いて、弱小チームのことを「ドアマット・チーム」と呼ぶのですが、まさにセインツは「ドアマット・チーム」だったんです。
「When the Saints Go Marching In」の歌詞をもじって、
“Oh when the Saints, win the Super Bowl, Oh when the Saints win the Super Bowl, I wont be in that number, Oh when the Saints win the Super Bowl”
「セインツがスーパーボウルで優勝するときには、俺はこの世には居ないだろうな。」
なんて替え歌が作られてしまったほど、
弱かったんです。
そんなセインツも、1980年代~1990年代、プレーオフにも何度か出場し先行き良好でした。しかし2005年8月、「ハリケーン・カトリーナ」がニューオリンズを襲います。
セインツのホーム・スタジアムの「ルイジアナ・スーパードーム」はかなりのダメージを受け、市民達の避難所にもなっていたこともあり、その年セインツはホームチームを転々としながら、戦いました。
2006年に「ルイジアナ・スーパードーム」に戻り、地区優勝。復興途中のニューオリンズにあって、セインツの戦いは市民に勇気と希望を与えたそうです。
そして2009年、ニューオリンズ・セインツは悲願のスーパーボウル初優勝を飾ります。

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この優勝の時、ヘッドコーチのショーン・ペイトンは、
「この優勝を市民に捧げる」と言い、ニューオリンズの街は、マルディグラが早く来たかのようなお祭り騒ぎになりました。
市民は朝まで、
“Who dat? Who dat? Who dat say dey gonna beat dem Saints”
「だれだ?だれだ?だれがセインツを倒せるって言った?」
(datはthatが、deyはtheyが、demはthemがなまったもので、gonnaはgoing toの意)
というセインツを応援する際に皆で叫ぶチャント(掛け声)を叫び続け、優勝の喜びを分かち合いました。
ちなみにこの”Who Dat?”というチャントは、ミンストレル・ショー(1830年代に始まったアメリカのミュージカルのような劇)の中で使われたのが最初で、
もちろん当時はセインツを応援するためのものではなかったのですが、
今でもニューオリンズのあらゆるミュージシャンが「When the Saints Go Marching In」を演奏途中などに取り入れ、日々セインツを応援しています。
かなり長いことニューオリンズに根ざした掛け声だと言えます。
そして、「ルイジアナ・スーパードーム」ではRebirth Brass Bandをはじめとする、ニューオリンズの超人気バンド達が応援演奏に駆けつけることもしばしばで、
音楽とスポーツの見事な共存が図られています。
そんな光景もニューオリンズならでは。いいですよねぇ。

おまけ

ちなみに僕はこの2010年2月7日(日本時間2月6日朝)、六本木のスポーツバーで、この試合を生放送で観戦していました。

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▲人がいっぱい

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▲優勝決定後、セインツファンの方々と。前列右が僕。

優勝決定の瞬間、そのお店でも「When The Saints Go Marching In」が流れ、その場に居た全員で歌いました。正直歌いながら泣いてしまいました。

セインツとニューオリンズ・ジャズは、どこであってもきってもきれない仲なんです。

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▲嬉しくて、こーゆーお土産もニューオリンズで買ってきたり、買ってきてもらったり。

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▲iPhoneケースもセインツです

こーいったお土産は、1500 Poydras Streetにある、 「ルイジアナ・スーパードーム」 に併設している、「Saints Shop」や、街中のお土産やさんで買えます!(iPhoneケースはRiver Walkというモールで手に入れました) 「Saints Shop」は試合のないときもオープンしているので、是非一度たちよってみることをおすすめいたします。

その日家について、アメリカのニュース番組をインターネットで見ていたところ、
ニューオリンズ市内のとある壁に、スプレーで、
「Let It Shine Let It Shine Let It Shine」
という落書きがされていたというニュースが流れていました。
もちろん落書きはほめられたことではないのですが、これはなかなか感動的な落書きなのです。
ニューオリンズ・ジャズでも演奏する黒人霊歌のナンバーに、
「This Little Light Of Mine」
という歌があります。
“This little light of mine, I’m gonna let it shine. This little light of mine, I’m gonna let it shine. This little light of mine, I’m gonna let it shine. Let it shine let it shine let it shine”
「この小さな光を僕は明るく照らすんだ」
という意味の曲なのですが、
これはハリケーンが来て、大変なことばかりだけれど、小さな希望を捨てずに頑張ってきたおかげで、スーパーボウル優勝なんていうこんなに大きい希望になったんだ!
という市民の気持ちを表した落書きじゃないのかな、と僕は思います。
過大解釈かもしれませんが。
スーパーボウルで優勝するということは、それほど大きなことなのです。
ニューオリンズは音楽とスポーツが共存している数少ない街。

NBAの記事も含めて、あえてこまかいルール説明などはしていません。
そう!音楽もスポーツも、本来なんの予備知識がなくても楽しめるものだからです。
NHKのBSなんかでもNFLの試合が沢山放映されているので、ぜひとも見てみてください。
「スーパーボウル」も毎年生中継しています!
ただし、いくらそれが観たいからって、仮病で高校をサボったりはしないでくださいね! 笑
ではではー。Who Dat! By まるやま。